空き家問題への対策
この記事では、空き家問題への対策について解説します。対策を検討中の方は勿論、空き家を抱える予定のある方にもお読み頂きたい内容となっております。
貴方が空き家を放置してはいけない理由
長い間、日本では「空き家を持っている」という事が大きな問題だとは考えられてきませんでした。なぜならば、空き家を放置しても、所有者に大きなデメリットがなく、また、問題を解消したければ、すぐに解消できると考えられてきたからです。
しかし、制度や不動産を取り巻く環境が変化した事により、現在、空き家を持ち続ける事には、様々なリスクやデメリットがあります。
対策の必要性をご理解頂く為、まず、「なぜ、空き家を放置してはいけないのか」という点についての説明をさせて頂きます。
従来から存在する空き屋を持ち続けるデメリット
以前から良く知られている空き屋を持ち続けるデメリットは、「税金(固定資産税や都市計画税)が発生し続ける」というものです。
空き屋問題に詳しくない方は、「税金さえ払えば、問題を先送りする事が出来る(空き屋を持ち続ける事が出来る)」という理解をされているかもしれません。しかし、その理解は適切ではありません。
これまでも、空き家の所有者には、
・老朽化した建物や設備が原因となって発生する問題についての責任
・周囲に張り出した樹木などについての責任
などの責任があり、税金の他にも一定の管理コストの負担が必要でした。また、問題が発生した場合の賠償責任なども負っていました。
新しく追加された空き屋を持ち続けるデメリット
そして、近年、空き屋問題を放置させない為に、「特定空家」という制度が創設されました。これに指定されると、所有し続ける為の税金は最大6倍にもなります(住宅に対して設定されている税金の軽減措置が受けられなくなる為)。
更に、市町村から「助言・指導・勧告・命令」を受ける事になります。そして、それに従わない場合には、罰金が科せられるほか、「市町村が貴方の代わりに強制的に空き家の解体などを行い、その費用が請求される」といった事まで行われる仕組みになりました。
家屋の状況にもよりますが、空き屋を低コストで保有し続ける事は、難しい時代になったのです。
※「特定空家」とは、「空家等対策の推進に関する特別措置法(平成27年2月施行)」という法律で定められたもので、適切に管理されていない空き家が認定されます。法律上は「特定空家等」として定義されており、地域の実情を反映した対応が行われる事になっています。
保有し続ける事による価値下落
また、かなりの管理コストをかけて維持する場合は別ですが、人が住んでいない家屋は急激に傷みます。
人が住み続けた直後であれば高く売れた家屋であっても、放置されていたが故に、「取り壊し費用を負担しないと売れなくなる」といった事もあり得るのです。
この為、「家屋の価値を維持したければ、管理コストが高くなり、そのようなコスト負担を避けようとすると、今度は、家屋の価値を維持できない」という問題もあるのです。
この点からも、空き屋の問題は放置せず、早い段階で対応方針を決めるべきです。
空き屋の処分が難しいケースの増加
また、「空き屋の処分(売却)が難しいケースが増えている」という事も知っておいて頂きたいと思います。
これまで、日本では「不動産は資産である」と考えられてきました。しかし、少子化などが原因となり、「全ての不動産に価値がある訳ではない」といった考え方が主流になり始めています。
その典型とも言えるのが、「コンパクトシティ(立地適正化計画制度)」の考え方です。これは、「住宅や都市機能を定められたエリアに誘導・集約する」という制度であり、重点的に活用していくエリアが指定される事になります。勿論、そのエリア外の不動産へのニーズには影響があります。
既に、空き屋が存在している場所によっては、「売りたくても買い手が見つからない」という事例は珍しくありません。「マイナス価格で売る(お金を払って引き取って貰う)」といった事例すら発生しています。
ですから、空き家の売却を考えている場合には、少しでも早く準備を始めておくべきなのです。準備が終わっていないと、売れるチャンスを逃してしまう事にもなりかねません。そして、買い手が見つかるまでは、空き屋を保有するコストやリスクは続きます。今や、不動産は「マイナス価値の資産」となる事もあるのです。
くれぐれも、「空き屋はすぐに処分できるから、空き家問題への対応は先延ばししても良い」とは考えないようにして下さい。
空き家問題への対策の方向性
では、空き家問題を抱えている人は、どのように問題と向き合えば良いのでしょうか。
これは、「既に空き家を所有している人」と「今後、空き家を所有する可能性がある人」で異なります。
既に空き家を所有している人が行うべき対策
既に空き家を所有している人は、少しでも早く、「空き家状態の不動産を所有している状態」を解消させるべきです。
空き家を持ち続けるデメリットやリスクについては前述の通りですので、ここでは繰り返しません。
具体的な対策の方向性としては、
・売却する(空き屋を手放す)。
・活用する(自分で住む、貸し出して誰かに住んで貰う、など)。
の二択となります。
なお、「しっかりとした管理を行う事で、実質的には空き家ではない状態を維持する」という対策の方向性は、この二択の中間とも言える選択肢となります。しかし、高い費用が発生する以上、通常は次のステップまでの「繋ぎの手段」と考えるべきです。
空き家を所有する可能性がある人が行うべき対策
これから空き家を所有する可能性がある人(多くは、相続で空き家を取得する予定のある人)が行うべき対策の方向性は、「空き家を取得しない」、または、「空き家を取得した場合に、少しでも良い条件で問題点を解消できるように準備しておく」という事になります。
例として、「親が居住する家屋の相続が予定される場合」を考えてみましょう。
まず、「その不動産を相続した場合、(諸費用を踏まえても)プラスの価格で売却出来るのか?」という点は確認しておくべきです。売却が難しい不動産の場合、相続回避も視野に入れるべきかもしれません。
また、「他の相続人との間で、どのように遺産を分けるのか?」という点も考えておくべきでしょう。十分な事前準備なしに共有名義で相続してしまうと、活用や売却の難易度が上がる事があります。
更に、「売却価値を維持する為の管理」にも気をつけるべきですし、「賃貸住宅に建て替えておく」といった検討も行った方が良い場合もあるでしょう。
行うべき対策はケースによって異なりますが、様々な観点から事前対策を検討するべきです。
空き家問題への事前対策で見落とされがちな注意点
なお、事前対策を検討される方に知っておいて頂きたい注意事項があります。
それは、「ご両親が関係する対策は、少しでも早く対策を始めるようにして下さい」という事です。
実は、ご両親の健康状態が悪化した場合(認知症の症状発生など)、法律的な問題により、対策が進められなくなってしまう可能性が高いのです。また、相続が関係する対策には、時間がかかるものが少なくありません。
ですから、ご両親がお元気なうちに、かつ、少しでも早いうちから対策を始めておくべきなのです。
なお、空き屋問題からは少し外れますが、不動産を維持する為のコストが負担となって、ご両親の老後の生活が苦しくなる事もあります。そのような事態を避ける為にも、ご両親がお住まいの不動産に関する検討は、早い段階から進めておく事をお勧めします。検討の結果、「賃貸住宅への立て替え」などの対策を行った場合、ご両親の老後の生活を豊かにする事が出来る場合もあります。
空き家問題の為の具体的な動き方についてのアドバイス
空き家問題は専門知識がないと対策の検討が難しい問題です。様々な税金が関係しますし、相続や不動産活用などについての知識も必要となります。
ですから、対策をお考えの方は、まず、専門家に相談される事をお勧めします。
なお、空き家問題については、「この資格を持っていれば、関連する対策を全て実行する事ができる」という資格は存在しません。
ですから、関連する分野の専門家の中から、空き家問題に詳しく、また、貴方が相談しやすい専門家を探し、相談して頂く事になります。勿論、多くの専門家は、自分の専門領域外の対策が必要な場合、他の専門家と連携して問題解決を行ってくれます。
最後になりますが、この記事はFP普及活動の一環として作成されたものですので、空き家問題を扱うFP(ファイナンシャル・プランナー)の存在についても、少し紹介させて頂きます。
FPは相談者のライフプランの分析・改善に秀でています。この為、「空き家問題の家計への負担」や「対策する事による人生上のリスク軽減」といった点を重視される方には、FPへの相談はお勧めできます。
また、多くのFPはその地域の制度や事情に精通しています。この為、空き家問題に詳しいFPであれば、各地域で用意されている補助金や助成金、地域の問題に対応する為に用意されている「空き家バンク」「住宅セーフティネット制度」などの制度を活用した提案も行ってくれる事でしょう。
空き家問題への対策をお考えの方は、FPへの相談もご検討下さい。