キャッシュフロー表(CF表)とは
この記事では、キャッシュフロー表(CF表)について解説します。
キャッシュフロー表には、大きく分けて2つの種類があります。しかし、キャッシュフローに関する知識が専門的である事もあり、その両方について扱っている解説は少ないようです。
当社は、両方のキャッシュフロー表を業務で扱っており、その差も良く理解しています。その知見を生かし、この記事では両方のキャッシュフロー表について解説します。
キャッシュフロー表(CF表)の2つの種類について
キャッシュフロー表には、2つの種類があります。
それが、
・法人向けのキャッシュフロー表
・個人向けのキャッシュフロー表
です。
両者とも、キャッシュ(現金)のフロー(流入・流出)に関する資料ですので、本質的には共通している部分があるのですが、含まれる情報・見た目は大きく異なる事が一般的です。この為、この2つのキャッシュフロー表は全く違う資料であると考えて頂いた方が良いでしょう。
しかし、ネット上でキャッシュフロー表について調べると、両方の情報が混ざって出てきます。そして、2種類のキャッシュフロー表が存在する事を前提とした解説を見つける事は困難です。キャッシュフロー表について学習されている方は、この点に注意するようにして下さい。
以下では、それぞれのキャッシュフロー表について解説します。
法人向けのキャッシュフロー表(CF表)の解説
最初に、法人向けのキャッシュフロー表について解説します。
※個人向けのキャッシュフロー表について知りたい方は、この項目は読み飛ばして頂いて結構です。
法人向けのキャッシュフロー表とは
法人向けのキャッシュフロー表とは、「ある期間の、その法人の現金(現金に類似する資産を含む)の変動額と、その変動額の内訳(分類ごとの変動額)を表す資料」です。
そして、法人向けのキャッシュフロー表は「過去の分析」と「将来の予想」の両方の目的の為に作成される事があります。
この法人向けのキャッシュフロー表を見ると、対象期間中に、
・その法人の現金が、どのくらい変化したか(する予定か)
・その法人の現金が変動した(する)のは、なぜなのか
といった事が確認できます。
日本においては、一部の企業(上場企業など)が、終了した事業年度についてのキャッシュフロー表の作成を義務づけられています。その場合の法人向けのキャッシュフロー表は形式が定まっており、「キャッシュフロー計算書」という名前で作成される事になります。
また、現金変動額の内訳については、通常、原因毎に細かく集計された数字が並ぶ事になりますが、キャッシュフロー計算書として作成される場合には、「営業活動(事業活動)」「投資活動」「財務活動」という3つのグループで集計される事が決まっています。
法人向けのキャッシュフロー表の重要性・作成するメリット
では、なぜ、法人はキャッシュフロー表を作成する必要があるのでしょうか。
それは、「利益が出る」という事と「現金が増える」という事がイコールではないからです。詳しい説明は省略しますが、黒字企業でも現金が不足して倒産してしまう事すらあるのです。
そして、その現金の過不足についての詳しい情報を確認する事が出来るのが、法人向けのキャッシュフロー表なのです。この為、企業の関係者にとって、その企業のキャッシュフロー表は非常に重要なのです。
また、法人向けのキャッシュフロー表を分析する事で、貸借対照表や損益計算書を確認するだけでは見つける事の出来ない問題点を見つける事が出来る場合もあります。
法人向けのキャッシュフロー表の作成方法(作成手順)
多くの場合、法人向けのキャッシュフロー表は、対象期間中の「会計上の利益(または損失)と実際の現金変動の差」を把握する事で作成されます。
もし、企業の利益・損失が現金の増減と完全に連動するのであれば、「利益・損失」と「現金変動額」は一致する事になります。しかし、日本企業が採用する会計制度では、現金が変動しない時にも利益・損失は発生します。逆に、利益・損失が発生していないのに、現金が変動する事もあります。
この為、その企業の「利益・損失」を確認すると共に、「利益・損失と現金変動額の差」を把握する事で、その企業の現金が変動した理由を全て説明出来るようになるのです。
勿論、キャッシュフロー表が作成される目的などによっては、「全ての取引についての現金変動を把握していく」という方法でキャッシュフロー表が作成される事もあります。
法人向けのキャッシュフロー表の作成に必要なスキル・専門家
キャッシュフロー表に関する知識は、経理の知識の中でも高度な知識として位置づけられています。
法人向けのキャッシュフロー表を作成する為には、その企業が行っている取引全ての「会計上の処理」と「現金の変動」の差を把握する必要があります。
この為、法人向けのキャッシュフロー表を作成する為には、その会社が行っている取引や経理処理についての知識は勿論、会計制度や税務についての知識も必要となります。
法人向けのキャッシュフロー表を扱う専門家としては、主に公認会計士が挙げられます(日本においては、一部の税理士も作成に携わっています)。
法人向けのキャッシュフロー表を活用する際の注意点
実は、法人向けのキャッシュフロー表を活用する事は容易ではありません。特に、キャッシュフロー計算書の形式で作成されたキャッシュフロー表から自社の問題を把握する事は、かなり難易度が高いと言えます。
この為、十分な知識のない人が法人向けのキャッシュフロー表を活用する際には、専門家に読み解いて貰う事をお勧めします。または、自分達で理解しやすいように、形式を工夫したキャッシュフロー表を作成する事もお勧め出来ます。
また、完全なキャッシュフロー表を作成する為には、かなりの手間が必要となります。この為、作成が義務ではない場合には、簡略化した(数字の精度を落とした)キャッシュフロー表の作成を検討しても良いでしょう。
個人向けのキャッシュフロー表(CF表)の解説
次に、個人向けのキャッシュフロー表について解説します。
※法人向けのキャッシュフロー表について知りたい方は、この項目は読み飛ばして頂いて結構です。
個人向けのキャッシュフロー表とは
個人向けのキャッシュフロー表とは、「その人の将来にわたる収入と支出に関するシミュレーションを行った資料」です。通常は、貯蓄や借入の推移をシミュレーションした結果も含まれます。
個人向けのキャッシュフロー表の形式は特に定められていませんが、今後の毎年の収入・支出・貯蓄(借入)が表やグラフで確認出来るようになっているものが一般的です。
なお、日本FP協会では、個人向けのキャッシュフロー表の事を「家計のキャッシュフロー表」と呼んでいます。
個人向けのキャッシュフロー表の重要性・作成するメリット
個人向けのキャッシュフロー表を作成すると、「老後資金が足りるかどうか」や「予定している大型出費を行っても、後で問題とならないか」などを確認する事が出来ます。また、個人向けのキャッシュフロー表を活用する事で、人生における様々な選択や決断が家計に与える影響を確認する事も出来ます。
この為、個人向けのキャッシュフロー表を作成・活用する事は、お金の問題にうまく対処しながら人生を歩んでいく上で極めて有益です。勿論、お金に関する悩みや不安を既に抱えている場合には、それらの問題に対応する上でも役に立ちます。
個人向けのキャッシュフロー表の作成方法(作成手順)
個人向けのキャッシュフロー表を作成する為には、まず、対象者の現状を詳しく把握する必要があります。具体的には、収入や支出の状況、資産や負債の内容、家族構成などについての詳しい情報が不可欠です。また、対象者の今後の人生設計を把握する必要もあります。
それらの情報をもとに、今後の毎年の収入額・支出額をシミュレーションし、その結果をまとめる事で、個人向けのキャッシュフロー表を作成する事が出来ます。
個人向けのキャッシュフロー表の作成に必要なスキル・専門家
個人向けのキャッシュフロー表を作成する為には、将来の収入と支出を見積もる為の様々な知識が必要となります。
まず、年金や税金の制度についての知識は不可欠です。また、様々なライフイベントが家計に与える影響について理解している必要もあります。多くのケースでは、不動産、保険、相続、社会保険などの分野についての知識も必要となります。
更に、事業に関する収入がある人のキャッシュフロー表を作成する場合には、事業分析に関する知識も必要となります(この場合、法人向けのキャッシュフロー表を作成する際に必要となる知識も求められます)。
個人向けのキャッシュフロー表の考え方はシンプルですが、実際の資料作成(数字計算)が簡単な訳ではないのです。
なお、個人向けのキャッシュフロー表を扱う専門家は、ファイナンシャル・プランナー(FP)です。ファイナンシャル・プランナーは、キャッシュフロー表の作成・活用をはじめ、お金の問題を解決する為の様々な支援を提供する専門家です。
個人向けのキャッシュフロー表を活用する際の注意点
個人向けのキャッシュフロー表には、将来のシミュレーションが含まれます。この為、対象者の現状についての分析能力は勿論の事、将来の計画を十分に理解し、それを数字に落とし込む能力がないと、十分な品質のキャッシュフロー表を作成する事は出来ません。
個人向けのキャッシュフロー表は、決められた手順通りに作業を進めていけば、誰でも同じ資料が作れるようなものではないのです。
この為、専門家以外による作成には限界があります。また、専門家に作業を依頼する場合でも、作業者のスキルによって、作成されるキャッシュフロー表の品質には大きな差が生じる事になります。
無償や低価格でのキャッシュフロー表作成をうたうサービスもありますが、本来、個人向けのキャッシュフロー表の作成には、かなりの手間がかかるものです。勿論、作成されたキャッシュフロー表を活用したアドバイスを行う為にも、十分な知識や経験が必要となります。
キャッシュフロー表に関する作業を第三者に依頼される場合には、その相手が十分な能力を持っている事の確認をお勧めします。
※身近に信頼できる専門家がいらっしゃらない場合には、当社が運営するCF表作成・FP相談サービスであるエフポータルをお勧めします。
キャッシュフロー表とは(まとめ)
- キャッシュフロー表(CF表)には、「法人向けのキャッシュフロー表」と「個人向けのキャッシュフロー表」の2つの種類があり、両者は大きく異なります。
- 法人向けのキャッシュフロー表は、「ある期間の、その法人の現金の変動額と、その変動額の内訳」を表す資料です。「過去の分析」と「将来の予想」の両方の目的の為に作成される事があります。
- 一部の企業では、終了した事業年度についてのキャッシュフロー表の作成が義務づけられています。その場合には、形式が定められており、名前は「キャッシュフロー計算書」となります。
- 個人向けのキャッシュフロー表は「家計のキャッシュフロー表」とも呼ばれ、「その人の将来にわたる収入と支出に関するシミュレーションの結果」を表す資料です。通常は、貯蓄や借入の推移をシミュレーションした結果も記載されます。
- 個人向けのキャッシュフロー表を作成する事は、お金の問題にうまく対処しながら人生を歩んでいく上で極めて有益です。また、お金に関する悩みや不安に対応する上でも役に立ちます。
- 個人向けのキャッシュフロー表を作成する為には、多くの知識や経験が必要となります。また、将来のシミュレーションが必要となる為、作成者によって品質に大きな差が出ます。作成は十分な能力を持った専門家に依頼するべきです。
- 個人向けのキャッシュフロー表を扱う専門家は、ファイナンシャル・プランナー(FP)です。